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「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ著 [本]

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) 「日の名残り」で、”この世界観はすごく好きだなぁ。”と感じたのがきっかけで、カズオ・イシグロ氏の他の著作が気になっていました。

 以下、ハヤカワepi文庫記載の紹介文です。

 優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。

 現実離れしたテーマながら、似たような事はこの世界で現実に起きているのだと思います。登場人物たちの想いがとてもリアルに描き出されていて胸が詰まりました。かと言って、いたずらに感傷に訴えることもなく、静謐に綴られた文章が、人生の懐かしさと悲しさ、そして愛しさを深く心に刻んでくれます。強く印象に残る作品でした。
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「カラマーゾフの兄弟」〈第1巻~第4巻〉 ドストエーフスキイ著 [本]

カラマーゾフの兄弟〈第1巻〉 (岩波文庫) 前から一度は読んでおきたいと思っていた小説です。どの訳者のにするか迷ったのですが、結局この岩波文庫の米川正夫氏訳にしました。

 登場人物の生い立ちが長々と書かれた第1巻の前半に苦戦しましたが、その後は物語にどんどん引き込まれて行きました。登場人物たちの極端な人格はとても面白く、特に物語の中心となるカラマーゾフ家の父子についての描写は興味深いものでした。自分勝手で欲望のままに生きる父。激情家の長男、理論家の二男、慈愛に満ちた三男。理屈っぽく長い文章の連続ですが、心理描写や各出来事の分析が緻密で、作家の巧みな表現力に終始圧倒されました。訳文も魅力的で、重厚な味わいを与えてくれる作品でした。

 家族について、信仰について、人間について、深く考えさせられます。また、暗澹としたカラマーゾフの父子関係とは対照的に描かれたある父子の挿話が一服の清涼剤のようで救われる思いでした。

 米川氏の訳は表現が古く、わかり辛い言い回しもありましたが、日本語の美しさ、格調の高さを楽しむことができました。本屋で亀山郁夫氏の訳もちらりと立ち読みしましたが、かなり現代的な文章で読み易そうです。こちらもいつか挑戦してみたくなりました。
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「星を継ぐもの」 ジェイムズ・P・ホーガン著 [本]

星を継ぐもの (創元SF文庫) 月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。(amzon.co.jp 紹介文より)

 我々と全く同じ特徴を持った五万年前の生物。彼は地球人なのか、異星人なのか。ガニメデで発見された生物との関係は。史上最大の謎を巡って、物理学、生物学、言語学、数学、あらゆる分野の学者が、知識と技術を集結し、科学的に分析を進めて行く。

 理解し難い文章が沢山あるので、前半読み進むのが辛かったが、話の内容を包括的に捉えられるようになった中盤あたりから、どんどん面白くなってくる。謎の解明が更に新たな謎を深め、その過程が大変興味深く、どんどん引き込まれて行きました。様々な論議を交わす学者間のやりとりが上手く描かれていて、科学の面白さを十二分に伝えてくれます。完璧な論法で壮大な宇宙の歴史が解明されるラストは圧巻でした。

 何万年、何千万年も前に、存在した宇宙に思いを巡らすと、果てしなくロマンが広がります。私はSFはどちらかと言えば苦手な方でしたが、この本は、読む楽しみはジャンルに関係ないことを再認識させてくれました。
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「しゃぼん玉」 乃南アサ著 [本]

しゃぼん玉 (新潮文庫 の 9-36) 通り魔や強盗傷害を繰り返しながら自堕落な日々を送る主人公の青年が、逃避行の末に辿り着いたのは宮崎県の山村だった。成り行きで村の老婆と共に暮らすことになった青年は、村人たちとの交流を通して自らの罪と向き合い始める。

 老婆をはじめ村人たちの語る方言の響きが温かく、また青年に接する人々の純朴な心が、優しく胸に沁み渡りました。人間そう簡単には変われないと思うが、青年の心に起こる微妙な変化を、乃南アサ氏は実にリアルに描き出していて、説得力のある文章に感動しました。青年を変えた人々の優しさ、人生をやり直したいと願う青年の成長に、人間の無限の可能性を見た気がした。心地よい涙が溢れ、爽やかな読後感に包まれる作品でした。
 乃南アサ氏の著書は初めてでしたが、心理描写の上手さに強く惹かれました。他の作品も読んでみたいと思う。
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「贖罪」 イアン・マキューアン著 [本]

贖罪 上巻 (1) (新潮文庫 マ 28-3)贖罪 下巻 (3) (新潮文庫 マ 28-4)

 映画「つぐない」を観てから読もうかとも迷ったのですが、好奇心に駆られて読み始めたら止まらなくなりました。寝不足気味です。
 とりあえず、”まず映画を。”と考えておられる方は、以下読み飛ばして下さい。話の重要部分は明かしていないつもりですが、念のため。。。


 第二次大戦の数年前、イギリスのある裕福な一家に起きた一大事件が、登場人物たちの運命を大きく変えていく。
 特に、事件の前触れから、事件が起こるまでの上巻は、読み応え充分でした。それぞれの人物の関係、性格、心理を、一気に描いてみせる作者の手腕が凄いと思った。意識と無意識の世界を交錯させながら、事件の本質が実に緻密に掘り下げられていました。
 長々と綴られた文章が、最初はくどく感じて挫折しそうになったが、いつの間にか物語の世界から離れられなくなっている自分がいました。
 このくど過ぎるほどの上巻の描写が、下巻の大前提として大きく生きています。
 時を経て戦時中の下巻。事件後の登場人物たちに降りかかる苦境。それぞれの運命に、ぐいぐいと引き込まれて行きました。
 上手いと思ったのが、主要人物のひとりが、”小説家”である事が大きな鍵になっていること。そして迎えるラスト。ここで、本の構成におけるカラクリが明らかになるのですが、とても衝撃的なものでした。この最終章によって読後の感動が更にぐっと深まってくる。タイトル「贖罪」の意味が心に重くのしかかります。
 キーラ・ナイトレイとジェームズ・マカヴォイを、彼らが演じる人物に重ねられた分、読み易かったかも。映画のほうも観られたらいいなと思います。
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「凍りついた香り」 小川洋子著 [本]

凍りついた香り (幻冬舎文庫) ある日突然恋人が自殺。その真相を探るため、調香師だった彼が最後に残した香りや言葉を手掛かりに、”私”は彼の生家、そしてプラハを訪れる。
 徐々に明らかにされていく”私”の知らなかった恋人の過去。彼の弟、母親、プラハの少年、温室の番人など、どこか浮世離れした人物たちの存在が読み手の興味を掻き立て、物語にぐいぐいと引き込まれます。
 静謐で美しい小川洋子氏の文章は、清潔感と同時に官能的な香りも漂わせ、独自の世界観を展開しています。ファンタジックでありながら、全体に浮遊する人間の哀しみはとてもリアルに心の奥に染み渡りました。
 個人的に、チェコのプラハは、スメタナを初めて聴いた時に一度は行ってみたいと憧れた街。主人公の抱く喪失感と街のイメージが見事に一体化していたと思います。


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「精霊の守り人」 上橋 菜穂子著 [本]

精霊の守り人  NHKBSで放送していますが、原作が気になって読んでみたら、これがとても面白くて、図書館に直行。シリーズの「闇の守り人」「夢の守り人」と続き、現在「神の守り人」を読んでいるところです。
 背景に在る日本古代を思わせるようなアニミズム社会が最大の魅力。そして強く凛々しい女主人公を中心に展開する数々の冒険がとてもエキサイティングです。人と人との絆の暖かさにも何度も胸を打たれます。
 この本、ずっと前友人に評判を聞いていたのだが、児童書なのでやり過ごしていました(^^;。今となっては、もっと早く読んでおけば良かったと、後悔しています。ちなみに、一巻だけ娘に読ませたら、「うん、まあまあ良かったよ。」の一言で済ませられました。大人のツボと違うのかな。。。
 アニメの方は、感動は原作には及ばないものの、さすがスタジオIG制作。絵がとても綺麗です。


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「ハンニバル・ライジング」 トマス・ハリス著 [本]

ハンニバル・ライジング 上巻 (1)ハンニバル・ライジング 下巻 (3)
 21日より映画が公開されますが、その前に原作を読んでみました。
 若き日のハンニバルの壮絶な復讐劇・・・”怪物”レクター博士誕生の軌跡が興味深く綴られています。第二次大戦中のソ連軍とドイツ軍の戦争が、頭脳明晰なリトアニアの少年ハンニバルの人生を大きく狂わせてしまう。冷酷無情な復讐の鬼と化すハンニバル少年の過酷な運命があまりに悲しく憐れでした。
 しかし、テーマは重く陰鬱ながら、ハンニバルの魅力が作品を楽しく読ませてくれました。冷静沈着に次々と目的を遂げていくハンニバルの鮮やかな手腕が、とにかく格好良いので、特に後半はワクワクしっぱなし。敵と激しい攻防を繰り広げる場面ではハラハラ。また、日本の伝統文化が多く登場しハンニバルの成長に影響を及ぼすのですが、彼に慈愛を注ぐ日本人の叔母との和歌を用いての心情のやりとりなどは趣深くドキドキ、切なくて胸が締め付けられました。
 いやぁ、原作が面白かったので映画も早く観たい。若きハンニバルを演じるのはギャスパー・ウリエル(「かげろう」での印象が鮮烈でした)、叔母はコン・リー(日本人の役だけど演じられる日本人女優がいなかったのは残念)。監督は「真珠の耳飾の少女」のピーター・ウェーバー。脚本はトマス・ハリス本人。この顔合わせだけでも期待が高まります。辛いシーンも多々あると思うのですが、とにかくあのウリエルのレクターに興味津々です。
 映画サイト:http://www.hannibal-rising.jp/


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「地下鉄(メトロ)に乗って」 浅田次郎著 [本]

地下鉄(メトロ)に乗って ワンマンな父を忌避し続けてきた真次。ある日地下鉄に乗ると、彼が生まれ育った三十年前の町に辿りつく。彼はそこで父に反発して自殺した兄に出会う。そして更に過去へと遡り、真次は若き日の父を知るのだった。。。
 バラバラになった家族の現在が切ない。失った兄への想い。兄が生きていたら家族の在り方も違っていたのではないか。そんな家族の虚しさや後悔の念を具現しているような、渇いた都会の地下鉄の描写が胸を打ちます。
 戦中、戦後と激動の時代を不器用ながら懸命に生きる姿から、真次は父親の真の姿を初めて知る。真次と同じ気持ちで私も、親やそれ以前の世代の人への尊敬の思いを新たにしました。また、誰もが多くのものを背負って生きているんだなぁと、人間に対して優しく愛しい気持ちが込み上げてきました。真次の恋人の運命や、恩師の人生も深い。心に沁み渡る一冊でした。


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「手紙」 東野圭吾著 [本]

手紙 文庫本になって書店に並んでいたので思わず買って読んだ。2001年から毎日新聞日曜版で連載発表された作品らしい。11月には映画が公開予定です。
 強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる。(本書あらすじより)
 私は今まで加害者の家族について真剣に考えたことがあっただろうか…。
 小説で突き付けられた直貴の現実は衝撃的でした。何故なら彼が受ける差別や偏見は、私の中にも存在するものだとわかるから。「差別や偏見は無くならない」という現実を、直貴と共に思い知らされることになり愕然としました。”私がこの人の立場だったら…”と考える度に、正々堂々と振舞う自信がなくて気が滅入る。そう感じながらも、やはり人間として普通の生活を諦めざるを得ない直貴の境遇には心底同情しました。
 しかしその一方で「自分の現在の苦境は、剛志が犯した罪に対する刑の一部なのだ。……差別は必要なのだ。」と直貴の言う理屈も尤もだと思う。心の中で様々な葛藤が渦巻き、罪を犯すとは、贖罪とは、家族とは…といろいろ深く考えさせられました。
 ワクワクする謎解きや感動的などんでん返しは皆無ですが、読み応えありました。今まで読んだ東野圭吾の著書の中では一番好きかも。重く辛い気持ちにもなりますが、いつまでも心に残る小説だと思います。(映画を観るかどうかは別問題ですが(^^ゞ)。


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